- そして今日も世界は回る - 後編
14日 AM 8:00 今日はホワイトデー当日。 「おはよー。ボス! って…どしたん?その顔…」 「お早う。冠ちゃん」 朝から元気に挨拶してきた冠はアレクの顔に盛大なクマを見て驚く。 「ボス、昨日はお休みだったよね?」 「うん。ちょっと野暮用でね…」 「…チョコット休んできなよ?急ぎの用事が出来たら無線入れるから…」 「アリガトー。そうする…班長会議には出るからその前に無線入れて」 「了解。お大事にー。」 アレクは重い頭を抱えながらメディカルルームへと向かっていった。 ** ** ** 14日 AM 11:00 何時もの班長会議。違ったのは― 『…なんであの人あんなにこっちを見てるんだ!?』 今日は隊長と補佐官が休みなので篠井とマーティが会議に出ている。 そしてメンバーは何時もと変わりなく…。 いや…アレクだけが何時もと様子が違った。 何か思いつめたような…。そんな眼差しでマーティを見ている… 「…マーティ…先ほどからアレクがこちらを見ているのですが…心当たりでも?」 「篠井さん…。残念ながら心当たりがありません…」 「そうですか…では、そっとしておきましょう。」 「…え?」 「彼も大人です。用事があれば自分から言ってくるでしょう。」 篠井のその一言でマーティはクスッと笑い。 「そうですね。」 と篠井の意見に同意したのだった。 ** ** ** 14日 同時刻 班長会議に出たアレクは… 『うーん…意外と難しい…。どうしようっか?』 と至極真剣に悩んでいた。 昨夜、嬉々として作り始めたアクセサリー。 舐めてかかっていたら、大変見通しが甘かったようで… 『うーん。本人を見ていたら何か思いつくかも…』 と、結論に達し、マーティをガン見することになった。 しかし、会議が終わり誰もいなくなった会議室には未だうなっているアレクが居たとか… ** ** ** 14日 PM 18:00 何とか仕事を終えて部屋に帰ったアレクは岩瀬に連絡する。 「岩瀬ー!助けて?」 「…どうしたんだ?アレク…」 「いいからチョット部屋まで来てよ!!」 「…もう直ぐ悠さんが帰ってくるんだけど…」 「直ぐ終わるから!大至急!!」 岩瀬は何がなんだかサッパリ分からないが… 普段でもそう滅多に慌てたりしないアレクが慌てていることに驚いたが… とりあえずアレクのところに行こうと部屋を出た。 コンコン― 「来たぞ。アレク…」 岩瀬が部屋に入って目にしたのは― 只でさえ綺麗とは言いがたい部屋が更に悲惨な状況となっていた… 「どうしたんだ?これ…」 「あ!岩瀬!チョットこっちこっち。」 アレクに手招きされて岩瀬は混沌の部屋へと入っていった。 「アレク…何してんの?」 「んー。シルバーアクセを製作中…なんだけど…」 「…誰に?」 「…ちょっと…それより岩瀬!どっちがいい?」 「は?」 「だからー。コレとコレ。どっちがいい?」 「…誰がつけるのかもわからないのに…?」 「う…。」 「…マーティか?」 「…なんでバレルかなー…?」 「長い付き合いだからな。多少の事は分かるさ。」 「…そっか。」 「あぁ…。」 暫し2人でしんみりした後… 「って!こんな事してる場合じゃないよ!」 「…アレク…」 「なー。岩瀬どっちがいい?」 「んー。…どっち…ていうか、コレをあげるのか…?」 「……」 アレクの持っているものは― 歪な形のブレスレットが二つ…。 しかも微妙に形が違うだけで…。ほとんど同じ物が二つ。と言ったほうが正解だろう… 「アレク…。実は不器用なのか?」 「う…。やっぱりそう思う…?」 「開発の時は器用なのにな…」 「それは言わない約束で…。」 「本人に決めてもらえばいいんじゃないか?」 「…友達甲斐のない…」 「…それが、ここまで来た友人に対する言葉か?」 「だって…。岩瀬ちっとも役に立たないし…?」 「アレク…この状況で俺がどう役に立つと?」 「……」 「いいじゃないか…。プレゼントは心がこもっていれば喜んでくれるって!な?」 「…ホントに…?」 「大丈夫だって!マーティも嬉しいさ!(多分)」 岩瀬の微妙な慰めに少しは浮上したのか… アレクは一つ溜め息をついて。 「そうだな…。マーティに聞いてみるよ…。有り難う岩瀬。」 「あぁ…。前に愚痴を聞いてもらった御礼だよ。」 「…ゴメンな…一時間半も…」 「え?一時間半…?」 「あぁ…もう19:30がくるし…。石川さん帰ってきてるんじゃ…?」 「またな!」 と、挨拶もそこそこに岩瀬はダッシュで自室へと帰って行った…。 「さすが番犬…。早いなー。」 アレクは呆れたように呟いた。 ** ** ** 14日 PM 22:00 アレクは意を決したようにマーティの部屋へと向かっていった。 コンコン― 「マーティいる?」 「はい」 部屋から出てきたマーティは不思議そうにアレクを見る。 「どうかしましたか?」 「いや…ちょっと… ここじゃなんだから…屋上でも行こうか?」 「…えぇ…」 2人は連れ立って屋上へと上っていく…。 少し肌寒い風がふくなか… アレクとマーティはフェンスの方へと歩んでいく。 「…どうかしたんですか…?」 「…えーっと…。マーティ、バレンタインにチョコくれたよね…そのお返しに…」 「…お返しに?」 「…これ…」 そう言ってアレクが差し出したのは、先ほどまで格闘中だったブレスレットで― 「…コレを私に…?」 「うん。マーティの好みが分からなかったから…。自分で作ってみたんだけど…」 「アレクが自分で…?」 「あ!気に入らなかったらその辺に置いといてくれてもいいけど…」 アレクが言い訳(?)をしている間にマーティの眼には涙が浮かんでくる… 「マーティ…」 アレクはどうしていいか分からずオロオロしていたが…。 そっとマーティを抱きしめた。 「ありがとう…アレク。私の為に、貴方が“何か”を作ってくれるとは思ってもいなかったです」 「…マーティ」 「本当にありがとうございます…嬉しいです。」 「そんなに喜んでくれるとチョット心苦しいけど…」 「?」 「実はソレ…大分歪なんだけど…」 マーティは包装されているプレゼントを開けて中身を見た。 そこにはアレクの言うとおり歪な。けれど暖かい感じのするブレスレットが入っていた。 「つけても?」 「…ドウゾ。」 アレクはマーティの手に自分が作ったブレスレットを着ける。 「…綺麗です。」 「そっか。」 「はい。」 アレクはそう言って微笑むマーティの横顔を見て。 『岩瀬の言うとおりだったな…。心がこもっていれば分かってくれる…か。』 アレクとマーティのホワイトデーはこうして幕を閉じた。 が― ** ** ** 15日 AM 7:00 翌日の食堂で。 「アレク!」 「お早うクロさん」 「…お前マーティにアレげたの?」 「クロさん…何時の間に見たの?」 クロウの質問にアレクは驚く… 何故ならアレクが余りにも部屋を汚すので、片づけが終わるまでクロウは何処かに居候?中だ。 「ふふふ。で、マーティの反応は?」 「…クロさん…?」 「俺がアレクに教えてあげたんじゃないか!ホワイトデーの事を。」 「そうなんですけど…。」 「ケチケチするな!」 「ケチケチって…。ナイショです!」 「…アレクー?」 「教えません。クロさんでも。」 「ふーん。ま、その様子じゃ上手くいったみたいだけどね。」 「クロさん!?」 「ははは。じゃあ、早く部屋片付けとけよ!」 「…クロさん…」 アレクは一枚上手なクロウに溜め息をつきつつ― しかし、嬉しそうに食事へとありついたのだった。 Fin
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アトガキ(言い訳)トーク。
はい。初書きアレマでした…。
が、見事に惨敗デッス(>_<)
…難しいですね…城とか(笑)
岩瀬とアレクの会話が一番楽しかったです。
また、チャレンジしたいなー、と。
…頑張りまっす…